研究嗜好
応用確率論,統計学,応用表現論。
かけ離れた学問の境界線に魅力を感じています。 確率と言う学問そ
のものよりも、確率を言語として扱う分野を常に探しています。
ノンアカデミックの方はこちら。
著物
Takeru Miyato, Shin-ichi Maeda, Masanori Koyama, Ken Nakae, Shin Ishii,
Distributional Smoothing by Virtual Adversarial Examples.
Submitted to arxiv, 2015
Sotetsu Koyamada, Masanori Koyama, Ken Nakae, Shin Ishii,
Principal Sensitivity Analysis.
The Pacific-Asia Conference on Knowledge Discovery and Data Mining (PAKDD), Ho Chi Minh City, Vietnam, 05/2015
David F.Anderson and Masanori Koyama, An asymptotic relationship between coupling methods for stochastically modeled population processes
,IMA Journal of Numerical Analysis, IMA Journal of Numerical Analysis 03/2014; DOI:10.1093/imanum/dru044
Gota Morota, Masanori Koyama, Guilherme J M Rosa, Kent A Weigel, Daniel Gianola Predicting complex traits using a diffusion kernel on genetic markers with an application to dairy cattle and wheat data,Genetics Selection Evolution 06/2013; 45(1):17. DOI:10.1186/1297-9686-45-17
David F. Anderson and Masanori Koyama, Weak error analysis of approximate simulation
methods for multi-scale stochastic chemical kinetic systems , SIAM: Multiscale Modeling and
Simulation, Vol. 10, No. 4, 1493 - 1524, 2012.
Masanori Koyama, Michael Orrison and David Neel, Irreducible graphs . Journal of Combi-
natorial Mathematics and Combinatorial Computing 62 (2007), 35-43.
学位論文:
Masanori Koyama, Fast
Fourier Transform for Symmetric Group.
(学士論文)
Masanori Koyama, Analysis for stochastically modeled biochemcial processes with applications to numerical methods
(博士論文)
その他:
Efficient Monte Carlo Image Analysis for the Location Of Vascular Entity.
Henrik Skibbe, Marco Reisert, Shin-Ichi Maeda, Masanori Koyama, Shigeyuki Oba, Kei Ito, Shin Ishii, IEEE Transactions on Medical Imaging 10/2014; 34(2). DOI:10.1109/TMI.2014.2364404
A Statistical Method of Identifying Interactions in Neuron–Glia Systems Based on Functional Multicell Ca2+ Imaging, PLoS Computational Biology 11/2014; 10(11):e1003949. DOI:10.1371/journal.pcbi.1003949
Deep learning of fMRI big data: a novel approach to subject-transfer decoding.
Sotetsu Koyamada, Yumi Shikauchi, Ken Nakae, Masanori Koyama, Shin Ishii, Submitted
会議、発表(査読なし)
Pacific Coast Undergraduate Mathematics Conference
“Fast Fourier Transform for Symmetric Group,” 2007
Joint Mathematics Meeting in New Orleans,
“Irreducible Graphs”, poster award, 2007
qBio Summer School in Los Alamos,
“Weak Analysis of stochastic chemical kinetic systems”, 2011
Winter qBIO Conference, poster presentation
“Inference of stochastic dynamics from snapshot data”, 2015
Invited talk, Ritsumeikan University,
“Weak analysis and MLMC for the system of interacting
Poisson processes”, 2015
執筆中
Michael Hansen, Masanori Koyama, Michael Orrison, Doubly adapted tensor basis of the
Symmetric Group Algebra
機械学習と確率過程:
数学では、決まったルールに従って動くシステム、「モデル」について研究します。
従って、数学を世のために応用するためにはまず、対象とする世の中の現象を
うまく表す「モデル」を探し出す必要があり、この仕事を担うのは統計学です。
モデルにはたくさんの種類が
ありますが、大きく分けて二つのカテゴリがある、と私は考えています。一つは、経済や物理などの
人間の哲学が直接反映されている、直感的なモデル (ホワイトボックス)。もう一つは、
非直感的ではあるが、データを限りなくうまく模倣することのできるモデル(ブラックボックス)。
例えば、N個の実数のデータは、N次元の多項式で完璧に模倣することができますが、これから
でるモデルは非直感的であり、何が何を引き起こしているのかを哲学的な観点から
観察することはできません。さらに、このようなモデルは、N+1個目のデータに
うまく対応できるとも限りません。無数の線形変換と非線形有界関数を網の目のように
合成するモデル、ニューラルネットワークという関数群もあり、それらは多くのシチュエーションで
「予測精度」がよい、とも言われていますが、これも「何が起きているのかよくわからない」
ブラックボックスモデルです。 良いモデルとは「データからの乖離」、
「自然哲学の反映度」、「予測精度」のバランスが良いモデルのことです。これは、
ホワイトボックスモデルのみでもできず、ブラックボックスモデルのみでも
できません。ホワイトボックスモデルは多々にして単純すぎ、ブラックボックスモデルは
多々にして複雑すぎるがためです。 数学が日々創造している
確率過程のホワイトボックスモデルと、情報学が日々創造しているブラックボックスモデル
を組み合わせ、「哲学が確定している部分には数学を」「確定していない部分には
機械学習を」用いる手法を探索しています。
離散確率過程のシミュレーションアルゴリズム:
経済学から生化学に至るまで、確率過程のシミュレーションは様々な分野のモデリングに使われています。確率過程にはブラウン運動に基づく拡散過程と、ポアソン過程に基づく離散確率過程が有りますが、我々は特に離散確率過程について研究しています。化学反応のシミュレーションに於いて、化学反応の粒子数が非常に多い場合は連続的に変わりゆく「化学物質の濃度」を追ってゆけば良いので、ブラウン運動や確定性微分方程式を使う事が出来ますが、粒子数が少ない場合は「濃度」をモデルのアウトプットとするのに無理があります。この場合、ポアソン過程を用いた離散モデルが使われます。
シミュレーション法は大きく二つに分けて、粒子数の期待値を偏微分方程式(PDE)で近似して推測する方法と、モンテカルロ法でサンプルする方法が有りますが、どちらにも長短があります。PDE法については様々な方法が確率されていますが、大抵の場合は不偏推定量が得られず、計算した確率分布からのサンプリングも難しくなります。モンテカルロ法から得られる統計は(離散確率過程の場合)不変推定量になりますが、計算速度が著しく遅く、大きなシステムを解析する場合は無用の長物です。
我々David Anderson のチームは、モンテカルロ法の効率化について研究しています。近年Mike Giles によって提唱された階層モンテカルロ法は非常に画期的な手法であり、「正しく」使えばオイラー法でPDEを推測するのとあまり変わらない速度で不偏推定量を計算する事ができます。しかし「間違った」運用をすれば、この手法は高速性を失います。様々なケーススタディを通じて、階層モンテカルロ法の正しい使い方の明文化を目指しています。
遅延システムの離散確率モデル :
化学反応をモデルするにあたって、通常の連続マルコフ過程モデルは遅延(化学
反応が費やす時間)を考慮しません。モデル中の化学反応一つ一つが一
瞬にして起きる場合、この単純化が問題になることはあまりないかもしれません。
しかし、DNAからmRNA への転写は極端な場合「1時間あたり2mRNA分子」というスピードまで
遅くなる、という報告もあります(『Nature』誌5月19日号(2011; 473:
337-342)。)活性錯合体が途中で他の物質からの影響を受け、反応が途中でストップしてしまう
事もあり得ます。こういうケースにおいて遅延を無視するのには無理
があります。しかし、遅延システムの確率モデルはマルコフ条件を満たさない
ため、解析は非常に困難です。Manuel Barrio氏のチームは、遅延を考慮
した確率モデルをシミュレートする方法を開発しました。 私は、遅延システ
ムの確率モデルから大数の法則によって導かれる遅延微分方程式について研究
しています。確率モデルに基づいた遅延微分方程式は、微分方程式の理論のみ
でナイーブに考えて得られる遅延微分方程式とは全く異なった形を取ります。
非対称群環におけるFFT :
群環に置けるフーリエ変換とは、Wedderburnの定理で定義される、群環から行列環への同型写像の事です。
一般に知られている離数フーリエ変換は、群環の群が循環群Cnの時の特別なケースです。循環群のような、
群環が可換の場合の高速フーリエ変換は現時点で極められているのですが(n
次元のときのランタイムがO(nlogn))非可換の群環におけるランタイムは極め
られていません。しかし、対照群の群環などは、系統樹データの解析や選挙デー
タの解析等、様々な面白い分野で重要な役割をもっています。
私は、ハービーマッド大学 の応用代表論研究チーム(ART)
のMike Hansen, Michael Orrisonと共同で、Semi Nomral Unitsと言われる原始ベキ等のテンソルから作った基底を使った、対照群の群環におけるフーリエ変換を研究しています。 これまでの高速フーリエ変換は、どのような演算子をどこで使うかと言う事に重点を
置いた、「演算子の数学」でした。David Maslenが開発した公式の世界最速の
対照群FFTは、この「演算子の数学」の真骨頂です。しかし、この手法では、
アルゴリズムが非常に複雑になる傾向があります。
私たちは「線形代数」の視点から見た、「基底」を重点に置く、高速且つ実用化が易し
いFFTを提唱します。
ゲノムに基づいた量的形質の予測 :
ゲノムから量的発現を予測する、という事はすなわち、ゲノムから量的発現へ
の写像を算出する、という事につながります。もちろん、算出する写像は適当なものではなく、
任意に定められた基準を満たし、且つ、予測精度が高いものでなくては行けま
せん。予測精度の水準については、データと予測の相関が用いられたり、L2
距離が使われたりしますが、概して、任意に定められた
「データ」と「予測」の距離計量がベースになります。 例えば、形が線形モデ
ルであり、且つデータからモデルのL2距離の期待値が最小である、という条件を
満たす写像(予測)はBLUPと言われており、遺伝学の世界からの産物です。
師田郷太氏
と共に、リーズナブルな距離の定義に基づく、精度の高い予測を追い求めています。
最近の研究ではゲノム列における関数空間に再生核ヒルベルト空間
を作り、そこから定義される距離を使いました。
updated 2015 Aug